新聞掲載記事から転載しました。 朝日新聞 2002.09.22(日)  28面



モンスーンの食卓      金裕美氏(料理研究家)

サンマの煮つけ

 私が日本に来たのは二十数年前、ちょうどサンマが出始める季節でした。大阪に住んで、最初に見つけた楽しみは、近所の市場に行くことです。見たことのない食材が並んで、何時間いても飽きなかったのです。

 魚屋で、なじみのあるサンマとサバに目がいくと、すぐに「これは、おいしいよ」と店のおぱちやんから声をかけられました。やさしい声で、日本語がおぼつかない私の耳にも、はっきり聞き取れました。もちろん買って帰り、その日は母の煮付けの味を思い出しながら、台所に立ちました。
 いまではサンマの塩焼きや刺し身がわが家の好物に加わっています。それでも毎年サンマを見るたびに、「これは、おいしいよ」と
いう声が耳元で響きます。
 煮付けは材料にしょうゆや薬念(ヤンニョン)がしみこむように煮込む料理法です。魚や肉だけでなく、豆腐やジャガイモなどでも作ります。濃いめの味つけが保存性を増し、調理も簡単なので、日常の食卓に欠かせません。

ピリ辛で楽しむ秋の味

 サンマのような青魚は唐辛子でピリ辛の煮付けにすると、特有のくせもなくなり、ごはんにぴったりのおかずになります。日本では調味料を煮立ててから魚を入れますが、韓国では最初から材料も調味料も一緒に入れて、薬念と強火の力で魚のうまみを閉じこめてしまいます。野菜を食べてほしくて添えたカプや甘長唐辛子は、冷めても生臭みが移らないのが自慢です。
 上手に作るコツは、煮立ったら落としぶたをして徐々に火を弱め、汁がトロリとなるまで煮詰めることです。焦げ付かないように注意してください。
 同じ薬念を使って、冬にはプリと大根を煮てみてください。イワシやサバなどの青魚、タチウオもいいですね。すっぱくなったキムチがある日は、コチュジャンとしょうゆを半分にして一緒に煮付けるのもおすすめです。

作り方

【材料】(4人前)
サンマ大2匹(400ゥ)、カブ450ゥ、甘長唐辛子(またはシシトウ)4個、長ネギ1本、
 干しシイタケ2枚、シイタケの戻し汁と水をあわせて1と2分の1カップ
薬念(しょうゆ大さじ4、コチュジヤン大さじ1と3分の1、韓国産で辛みの弱い粉唐辛子大さじ1、
おろしたニンニクとショウガ各小さじ1、酒大さじ4、みりん大さじ4)
@干しシイタケは戻して、汁もとっておく。
 カブは茎を1センチほど残して葉を切り落とし、茎についた土を流水で洗う。
 皮をむき、縦に半分に切って5分ほど下ゆでしておく。
Aサンマは頭を落とし、内臓をかきだす。水できれいに洗って水分をふき取る。
 横半分の筒切りにし、それぞれ両面に2、3カ所切れ目を入れる。
B長ネギは幅1センチの斜め切りに、シイタケは石づきを取り、半分に切る。
C薬念の材料を合わせ、シイタケの戻し汁と水を加えて混ぜる。
D底の平らな鍋に長ネギを半量程度敷き、サンマを並べる。
 カプ、残りの長ネギ、シイタケも一緒に入れて
Cを注ぐ。強火にかけて煮立ったらアルミホイルなどで落としぶたをして約5〜7分加熱する。
 中火にして甘長唐辛子を加え、全体に煮汁が回るようにときどきかけながらさらに5〜7分ほど煮込む。
 最後は弱火にして煮汁がとろりとなったらできあがり。火をつけて約20分が目安。

《付記》
余ったカブの皮と葉は捨てずに酢の物に。カプの皮100ゥをせん切りに、葉50ゥを小口切りにする。塩大さじ2分の1を振りかけ、手でもんですぐ水洗いして水気をしぼる。薬念(粉唐辛子小さじ4分の1、酢大さじ1と3分の1、ハチミツ大さじ2分の1、長ネギ小口切り・すりゴマ各大さじ1、ゴマ油小さじ2分の1、おろしたニンニクとショウガ各少々)であえる。




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