新聞掲載記事から転載しました。 朝日新聞 2002.07.07(日)  32面



モンスーンの食卓      藤井 宗哲氏(精進料理研究室主宰)

枝豆のみぞれあえ

 お彼岸すぎから初夏にかけては、葉ものがみずみずしく、甘みがうれしい季節。梅雨が明けると、キュウリ、ナス、白ウリなどが一段と精彩を放ちます。
 そう、枝豆も一段と甘みを増します。ビールとは出合いものですが、翌日、残った枝豆を一工夫。大根おろしに酢を落として、酸味をきかせると、なぜか心身ともにすっきりします。

酢の酸味で気分静める

 石塚左玄という明治初期の食養学者の食道歌に「春にがみ、夏は酢のもの、秋からみ、冬は油と、合点して食へ」とあります。春のにがみとは、フキ、セリなど。トウガラシやショウガは秋が旬。冬の油は言うまでもありません。
 そして酸味は夏。ぬか漬けは夏の食卓に欠かせません。少し酸味のあるぬか漬けのキュウリやナスを食べると、気分が静まる気がします。おそらく、酸味がそうさせているのかもしれません。外気とともに上がる体熱を酸気が下げてくれるからでしょう。
 ぼくはキュウリを1週間ほど漬けておきます。これを刻み、10分ほど水にさらし、ぎゅっと絞って器に盛ります。かすかに酸味がにおう。酒をちゅっとふり、しょうゆをちょいと落とす。最後に白のいりゴマをひねりながらふります。「おろしショウガを」という人もいますが、ショウガだとシャキッとしすぎます。

 これは「かくや」と呼ぶ料理です。由来には諸説あります。一つは、沢庵禅師の弟子の覚也が工夫考案した。二つめは、高野山の隔夜堂に勤める老僧のために香の物を刻んで食卓に添えた、との説。そして、徳川家康のお抱えの料理人岩下覚弥が考案したという説も。いずれも、もっともらしいが、どれが正説かというと大変難しいのです。今回はシソご飯、ジャガイモの磯辺揚げを添えました。夏の夕げにどうぞ。

作り方

■枝豆のみぞれあえ(4人前)
【材料】
さやをむいた枝豆1カップ、大根おろし1カップ、みりん大さじ1、酢大さじ1、しょうゆ小さじ1
@大根おろしは軽く水気を切る。
A調味料を合わせて、大根おろしに混ぜる。
B大根おろしの中に枝豆をちらす。

■ジャガイモの磯辺揚げ(4人前)
【材料】
ジャガイモ2個、焼きのり(10×5ぐらい)8枚、みりん大さじ1、しょうゆ大さじ1
@ジャガイモは皮をむき、すりおろして、軽く水気を切る。
Aのりの上に、ジャガイモを5氓ルどの厚さまで塗る。
 のりを下にして、揚げ油に入れ、きつね色になるまで揚げる。
B揚げたてをみりんとしようゆの調味液にからめる。

■シソご飯(4人前)
青ジソ10枚、米2カップ、昆布10角1枚、塩小さじ1
@洗った米に昆布と塩を加えて、普通に炊く。
A青ジソはみじん切りにして、塩(分量外)でもんで、あくを洗い流す。
Bご飯に混ぜて、小さなおむすびにする。

<付記>
ジャガイモの磯辺揚げは、ジャガイモのもちもちした食感と見た目がウナギのかば焼きのよう。わが庵では別名rかば焼きもどき」と名づけている遊び心のある料理だ。サンフランシスコの料理研究家がベジタリアンの料理コンテストのとき、rこれで、かば焼き丼を作ったところ、受賞しました」と喜んでお便りをくれた。初めて食べる人は「材料は何ですか」と、おいしさに不思議がる。どこの家庭にもある材料なんだけれど。




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