新聞掲載記事から転載しました。 朝日新聞 2002.02.17(日) 28面
土鍋でうまみ逃がさず小山 裕久(「青柳」主人)
日本料理には、海のものと山のものとが出合うことによって生まれるおいしさというものがあります。それは補い合うということでもありますが、相乗効果でもあるのです。
早春に収穫される春キャベツは、寒さにあたった分、甘さを増してたいへんおいしくなっています。これに、頃合いの海の幸・アサリを取り合わせて、簡単なおかずを作ってみましょう。
どちらにも共通して、おいしい水分が含まれています。それを逃がさす全部身体に取り込みたい。蒸したのでは、うまみは出てきても、おいしさが凝縮されません。かといって、煮るのも、加熱して出てくる水分と蒸発していく水分を考えると難しい。水を足せばいいようなものですが、おいしさはその水に溶け込んでも、水が介在する分、味が薄まります。
そういった不具合を解消してくれるのが土鍋です。素材に柔らかく熱が伝わって、水分は引き出すが蒸発させないという特性を利用します。
キャベツは芯から小さくザックリ切り分けます。それを土鍋全体に敷き詰めて、その上にアサリをだっぷりのせ、アサリに直接熱が加わらないようにして、火にかけます。もちろんアサリは十分に砂出しをして、殻の汚れをよくこすり落として使います。
キャベツから水分が出てきて、その蒸気が少し回り始めたら、臭み避けにお酒を入れてください。キャベツがしんなりして、アサリが口を開けて身がぷーっと膨れていたら、薄口しょうゆを落とし、ねぎを散らします。ねぎは、小口に切らず、少し長めに切ると歯触りがあっておいしいと思います。もう一度蓋をして、あとはほんの一呼吸。
アサリから出たうまみ出汁と、キャベツから出た甘い出汁の相乗効果を、早春の香りとともに味わってください。
アサリ600ゥ、春キャベツ1玉、細ねぎ適量
酒50cc、薄口しょうゆ大さじ1
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